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ジャムづくり

投稿者:(M)

きっかけはトルストイだった。もしかしたらチェーホフかも知れない。小説のなかにロシアの田園地帯の別荘での暮らしが書かれていて、「ジャムを作るときは水を入れない」という一行があった。なぜかその部分だけを鮮明に覚えている。前後のストーリーに全く影響を与えないのに、なぜ文豪がそのような記述をしたのか不思議に思ったから。その一行だけをテキストにして、初めてイチゴジャムを作ったのが20年以上前。以来、ほとんど毎年ジャムを作る。

九州は果物の宝庫だ。いまや世界的ブランドになった「あまおう」を始めとするイチゴ、さまざまな大きさの柑橘類、日本一の柿の産地があり、意外なことにリンゴも採れればブドウも採れる。産地ならどこでもそうかも知れないが、その豊富な種類の果物が都会にいると信じられないくらい安く店頭に並ぶ。そのうえ、近くの畑の脇にはイチジクが並べられていたり、知り合いの兼業農家からはキーウィがどっさり届く。我が家の庭にはサクランボが生る。その全てがジャムになる(枇杷はだめでしたが)。

今はイチゴの季節。都会の店に並ぶ透明パックが4つ入る段ボールのケースに直に無造作に放り込まれたイチゴに298円の値札が貼られていたりすると、買わずにはいられない。今年は3月のうちに既に2回、鍋いっぱいのイチゴを煮た。

愛用の鍋は鋳物ホーロー製、火のまわり方が優しいのでコトコトと水分を飛ばすには最適。コツはジャムの色がふっと濃くなるのを見逃さないこと。それがほどよい糖分が入ったときであり、ほどよく水分が飛んだとき。酸味が少なければレモンを絞る。熱いうちに煮沸消毒したビンに詰めて蓋をする。蓋を開けたときにポンと音がするのが真空の証。長く保存できるはずだが、数ヶ月しか試したことがない。それまでに片付いてしまうから。これが私のジャム作りのレシピの全て。

テレビを見ていたら「電子レンジでかんたんに生ジャム(?)ができます」などということを言っていた。電子レンジに限らず便利な道具は次々に登場する。その多くの謳い文句は「早くてかんたん」。そしてその頭に付くのは「忙しい現代人のために」。みんな何がそんなに忙しいのだろうか、とおばあちゃんは思う。

ジャムを作るのは、作る時間を楽しむためです。コトコトと果物が姿を変えていくのを眺めながら音楽を聴いたり、香りに包まれながら本を読む、甘い香りが家中に広がって、家族の誰もがその香りにつられてキッチンをのぞきに来る、そんな幸せな時間を過ごしたいためです。便利な道具にせっかくの時間を奪われたくはありません。文豪はきっとそんな時間の喜びを知っていたのだと思うのです。(M)


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