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咀嚼という仕事

投稿者:(S)

「もの作り」と「もの売り」の仕事に関わって40年あまり。行政や組合、企業からの依頼でプロダクトデザインや開発企画のコンサルテーション、そして、著述や講演、さまざまなコンペの審査員、行政の施策審議委員などと共に、オリジナル商品の開発、販売も続けてきた。よくもまぁ、いろんな仕事に関わってきたものだ、と自分でも驚く。時代に応じて方法は変ったけれど、「生活を快適にするもの作りとその販売」という姿勢はブレてないつもりである。

そして先年、東京へ戻って感じたことは、やはりというべきか、ユーザーとメーカーの“もの”に対する乖離である。ユーザーはメーカーの事情を知らずにあれやこれやと無いものねだりをする、メーカーはユーザーが求めている価値を知ろうともせず勝手な思い入れでものを作る。その行き違いが、一方で「よいものがない」、他方で「作っても売れない」という不満になる。

近年、ITにより流通の形態が変ってきた。商品を卸や小売を経ずにユーザーとメーカーで直接販売する方法が増えつつある。しかし、その割にはユーザーのニーズがメーカーに伝わることが少なく、現場では相変わらず手探りで商品開発が行われている。十年ほど前から急速に発達したSNS(Social Networking Service=ネットを使ってユーザーと交流できるサービス。ブログやミクシィ、ツイッターなどがその代表格)という手段も、新しい商品販売手法としては導入されているが、開発手法に活かされている例はあまり見当たらない。昨年あたりから注目を集める新たなSNSである“フェイスブック”も特に双方向の交流機能が強いと言われてはいても、本屋に並ぶ解説書は「いかに販売に役立てるか」が強調されたものばかりで「どうすればものづくりに活かせるか」は書かれてない。つまり、現実は依然として片方向のままなのだ。

どれほどITが進化して多様なSNSが生まれても、また、IT以外の新しい方法でユーザーの情報を集めても、それを分析・構成した後、メーカーの現場を鑑みながら上手く商品に表現する作業が必要になる。つまり、アンケートで評価を訊くだけでなく、具体的な商品像にまで繋げる咀嚼作業が求められるわけで、そうでないとユーザーにフィットする商品など望むべくもない。今、メーカーに求められているのはデザイナーやプランナーより咀嚼屋(マスティケーター)ではないか。そんな新たな職業が世に認められる時代が来そうな気がする。(S)

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